【今回の取材地】
面積:75.18㎢
総人口:13,857人
人口密度:184人/㎢
隣接自治体:富士川町、身延町など
(2024年1月1日時点)
今回は日本の伝統的な花火である「和火」を製造する職人さんのお話。
日本の伝統文化である花火には、実は洋火と和火の2種類がある。
洋火とは、明治維新後に外国から輸入された発光剤(塩素酸カリウム)や彩色光剤(ストロンチウムなど)を使用し、様々な色を表現することが可能になった花火のことである。
洋火もまた、他所から技術を取り入れて発展してきた私たち日本人らしいもの。人々を魅了する花火であることには疑う余地もない。
対して和火とは江戸時代に国内で入手できる材料である硝石・硫黄・木炭のみで作られた、純日本産の花火のことである。
この材料からつくられる火の色は赤橙色のみ。皆さんお馴染みの線香花火も同じ。
線香花火を見つめていると、なぜかとても懐かしくて落ち着いた気分に浸るのは、わたしたち日本人のDNAに刻み込まれているから、かもしれない。
佐々木厳さんは「和火」のみを製造する「和火師」。
一般的に和火のみを扱う花火師はほとんどいない。そのため、この肩書で活動する佐々木さんはとても希少な存在である。
市川三郷町は花火の町として有名。佐々木さんは老舗花火会社に勤務してキャリアをスタートさせるが、東日本大震災をきっかけに「祈り」を意味する本来の和火に感銘を受け、和火職人への道を選ぶ。
化合物を使わない和火は、すべて自然由来ものが原料になっている。
佐々木さんは原料の調達から花火を向き合う。松煙の原料となる赤松の古木を自らの足で探しにいくのである。
「自然とつながりながら、火が生み出される。そうやって、人の想いを伝えられれば」
私たちが普段何気なく見ている花火には、自然との共生や、人が何かを願うことなど、生きていくうえで根源的な摂理や意識が隠されている。しかしそれを日々自覚しながら生きていくことは、なかなか難しいものである。
「誰かの願いだったり、苦しいことも、ぜんぶクリアになって。そういう場所を作っていければ」
なぜ私たちが、繊細で神秘的な和火の美しさに胸を打たれるのか。
それは自然とのかかわりに癒され、悩み苦しんでいることが鎮まっていく。そんな力が和火に宿っているからかもしれない。