【今回の取材地】
総人口:164,002人
人口密度:1,003人/㎢
隣接自治体:浜松市、袋井市など
(2023年12月1日時点)
軽トラックで始めるまちづくり
軽トラックの荷台を店舗に見立てた「軽トラ市」。
2005年に岩手県雫石町で始まり、今では日本全国で開催されている。磐田市でも、JR磐田駅からまっすぐにのびるジュビロードを会場に、年4回「みんなで軽トラ市いわた☆駅前楽市(以下、駅前楽市)」が開催されている。今回、そんな駅前楽市の実行委員を務める山下貢史(こうじ)さんに取材を行った。
駅前楽市代表幹事の山下さん
軽トラ市は、地域の商工会議所や商店街が中心となって開催しているのだが、その目的は「商店街をはじめ、その地域の売上を上げる」こと。磐田市の駅前楽市も、商店街や地域の売り上げを増やし、まちの経済を活性化させる目的で、2011年から開催されている。
「あのお店気になっているんだよね、入ったことないけど」。
誰にでもそんな気になるお店はないだろうか。軽トラ市では、気になっていたそのお店が軽トラでやってくる。お店の中に入らなくても商品が目に入り、雰囲気もわかるので、気になったままでは終わらないのである。普段は気になるけど立ち寄らなかったお店と、お客さんとのきっかけづくりとなっている。
軽トラ市は、言わば「新規ファン獲得の場」。出店者からすると、より多くのお客さんと接点をつくることができ、お客さんからすれば、新たな店と出会えるチャンスとなる。ここでの出会いが日常の消費行動につながれば、商店街が活性化し、まち全体へと広がると考えているのだという。
駅前楽市の特別感を日常へ
100台を超える軽トラックが一堂に会する駅前楽市は年4回、3時間開催される。磐田市内の主要道路を封鎖することや、出店者の負担を考えて、開催時間を3時間に限定。この“3時間限定”が特別感を醸成し、人を惹きつけているのではないかと山下さんは言う。
駅前楽市1回あたりの経済効果は約450万円と、開催時間から考えれば大きなものだと言えるであろう。この数字は、山下さんが言う「特別感」が生み出しているのではないだろうか。
対面で販売されるのも軽トラ市の楽しさのポイント
出店者の多くは、磐田駅周辺の商店街や市内に店舗を構えている。出店者は飲食店や青果店などさまざまだが、地元で親しまれている「静岡メロン漬け」のような、ご当地モノが販売されているのが目についた。
駅前楽市に出店するどの店舗にも絶え間なく人が列をなす中、ひと際賑わう一角があった。そこでは静岡県立磐田農業高等学校の生徒がテントを張って出店し、食品研究部が部活動内でつくったパンやプリンなどを販売。開始1時間足らずで売り切れる品が出るほどの盛況ぶりであった。
「まちの活性化」を目的に駅前楽市を開催しているとのことだったが、目的である「まちの活性化」が、達成できているように感じた。しかし、「駅前楽市は、目的を達成できたのではないですか?」と尋ねると、山下さんは少し寂しそうに「まだまだ始まったばかりです」と言った。
駅前楽市は、まちにとって小さくない経済効果を上げるイベントであると言えるだろう。3時間という限られた開催のために、遠くから足を運ぶ人も少なくないのだという。限られた時間に多くの人が集まるため、駅前楽市が終わった後の光景とのギャップを感じることになる。
「駅前楽市にはたくさん人が来てくれるんですが、日常的に来てくれるようになったかというと、まだまだなんですよね」
駅前楽市に集まった多くの人たちは、普段は市内のスーパーや大型ショッピングモールで買い物をするのだそう。なかなか思い描いている「まちの経済活性化」の達成までには至っていないようだ。
地元愛を原動力に目指す、地域経済の活性化
山下さんをはじめ、駅前楽市の実行委員メンバーは磐田市出身。自分たちが住み続けたいと思うこのまちを発展させたい。そして次の世代も、その先も「磐田が好きだから」と地元に根付いてくれるように。まずはまちの経済を活性化したいと、山下さんは駅前楽市に情熱を注いでいる。
「駅前楽市の集客や売上を商店街の発展につなげたい」
磐田市は製造業が盛んな地域であり、スポーツ産業も育っていることから、地域外から獲得した資金を、地域内で循環させる。そして最終的には、磐田市に住む人の生活が豊かになるようなシステムを作り上げるのが目標だという。
「いつまでも住み続けたいと思われるように」山下さんはこれからも軽トラックでまちの未来を拓いていく。
【参考文献】
- 磐田商工会議所「みんなで軽トラ市 いわた☆駅前楽市」(2023年6月8日参照)
- マネ会 生活 by Ameba「磐田市の中小企業を応援!磐田商工会議所が取り組む地域応援事業を紹介」(2023年6月8日参照)
- 軽トラ市ネットワーク 公式HP(2023年6月8日参照)
- LIFULL HOME’S 住まいインデックス(2023年6月9日参照)