まちを拓く人 試みの交差点
更新日:2024年09月19日

河津町に吹く新しい風 #4|河津町の魅力に触れて考える町の未来

ライター:
shizuoka-kawadu

【今回の取材地】

面積:100.69㎡
総人口:6,366人
人口密度:63.2人/㎢
隣接自治体:下田市、伊豆市など
(2023年12月1日時点)

「人」がつむぐ、河津の魅力

カワヅザクラをはじめ、ループ橋や河津七滝、樹齢1000年以上ともいわれる楠(くすのき)など、河津町にはたくさんの観光資源がある。また、町の周囲には海や山など豊富な自然があふれている。

特急「踊り子」に乗れば首都圏からも1本で行くことができるというアクセスの良さも、大きな魅力のひとつと言えるだろう。「リモートワーク」や「二拠点生活」という新しい生活様式が当たり前になりつつある今日、河津町へ生活拠点を移すことも難しいことではないはずである。

実際、記事を制作するにあたり、河津町へ滞在している間にも、生活拠点の一つとして河津町に滞在する人に出会った。また、始めは観光を目的に河津町を訪れていたが、いつしか移住することになったという人もいた。

人をこんなにも惹きつける、河津町の魅力とは何でしょうか

話を聞いた人は口をそろえて「河津の人が好きだ」という。実際、滞在取材を通して、その魅力を私自身存分に感じることができた。取材させていただいた方や、お店の方、町ですれ違う方。出会った河津の人は、誰もが優しさに溢れていると感じた。

町民の温かさを感じているのは、私だけに限らない。今回話を聞いた、地域おこし協力隊卒業生の輿水さんも「河津に住んでよかった」と改めて思った出来事があったそう。

ある年、台風が伊豆半島を直撃。それを受けて、輿水さんの自宅屋根の一部が破損してしまった。すると、近隣の方が「うちも修理を頼むから」と、一緒に修理を依頼してくださり、2、3日後には輿水さんの家の屋根はすっかり直っていたそう。すぐに修理を頼んでくださった方のところへ伺うと、「昼間に来て、修理してくれてたよ」と言っていた。お代を払おうと思っても、「ついでにやっただけだから」と言っていたそうだ。

「町の一員になった気がしました」

これを受け、輿水さんは河津町へ移住して良かったと思ったと同時に、安心感を得たと言う。困っている人がいたら助ける。当たり前のことのようだが、移住してきた輿水さんにとってここまで親身になって助けてくれる人が周りにいることは、河津町へ移住して良かったと思うきっかけとなったはずだ。

河津町のみらい

一方で、今回特集で取り上げてきた少子高齢化をはじめ、河津町はさまざまな課題を抱えている。

例えば、観光産業。1章で触れたように、カワヅザクラにばかり注目が集まり、年間を通して安定的な集客・収入を得ることができていないという課題がある。また、そのカワヅザクラもいつかは枯れてしまう。そのため、今ある景観をずっと守り続けることは難しいと言える。

救急に関しては、町には重とく患者を受け入れることができる病院がなく、緊急時はドクターヘリがやってくる。しかし、夜間はヘリが出動できず、救急車でループ橋や天城峠を走ることを余儀なくされる。

自然が豊かで、温暖な気候。地元の方は穏やかで、普段生活する上では申し分ない環境が河津町にある。しかし、観光産業や緊急時といったところに目を向けてみると課題があるのが事実なのである。

それでも、河津町は人を魅了する。その根底には「人」の存在があると思う。

「河津の人が好きなんです」と、取材をさせていただいた全員が口をそろえて言っていた。前述した輿水さんの話のように、優しく、人を思いやる気持ちが強いなと、実際に滞在してみて私も感じた。

「田舎ですから」と一言で片づけてしまう人もいる。しかし、こうして全員が「町民の人柄の良さ」というところに愛を持っているのは、河津町の誇れる要素の一つと言えるのではないだろうか。

「過疎化」という課題は、正解やゴールがある問題ではないのかもしれない。だからこそ、「河津町の人」という河津町だけの魅力をもって移住を促進するのも、一つの手ではないだろうか。

人と人とがつむぐ、河津の「みらい」

希望や、愛に溢れたものになるに違いない。私は、そう確信している。

関連記事