まちを拓く人
更新日:2024年05月23日

地域おこし協力隊出身、若手起業家の挑戦

ライター:

【今回の取材地】

北海道/十勝
面積:729.6㎢
総人口:4160人
人口密度:5.7人/㎢
隣接自治体:池田町、本別町など

地方の過疎化や少子高齢化に伴う人口流出に歯止めをかけるべく、総務省によって「地域おこし協力隊」の制度ができたのは2009年。年々増加を続け、2022年度は過去最多の6447人となり、2023年8月の全国市長村サミットで、松本総務大臣は「2026年度には、1万人を目標にする」と掲げた。

隊員は3年間、さまざまなテーマで地域活性化に関わるが、定着率は自治体によってさまざま。過疎が進む地域で、起業してビジネスを成功させるとなると難易度が高いことは言うまでもない。

そんななか、北海道十勝にある人口4,200人の浦幌町では、協力隊の制度も活用してここ数年、20代人口が転入超過になり、起業も活発になる状況が続いている。外から移住して活躍する若手経営者の小松さんに話を聞いた。

協力隊員を経て、町のための挑戦をスタート

小松輝さん(29)が地元の徳島大学を卒業して浦幌町にやってきたのは2017年。地域おこし協力隊員としてNPO法人〝うらほろスタイル〟で、観光事業などに携わった後、3年目の2019年に株式会社リペリエンスを設立し、ゲストハウス「ハハハホステル」や町の求人サイト「つつうらうら」を展開するなど現在、社員3人を抱える。また、北海道の東部エリア「道東」の観光や求人情報を発信する一般社団法人ドット道東の理事、留真温泉の経営母体Ofurotoの代表社員も務めるなど、複数の組織で活躍中である。

「1年目で多くの人たちとのつながりができました。困った時に相談したら助けてくれる、温かい方が多い町です。2年目、3年目を迎えたときに、このまま何も恩返しをせずに町を離れるのは恥ずかしいなと感じるようになっていました。せっかくできたつながりを生かして、町のために、何かに挑戦しようと」と、振り返る小松さん。

小松さんがゲストハウスを開業した理由

空き家になっていた施設をリノベーションしてゲストハウス〝ハハハホステル〟をやろうと思った理由は、「町に来る人を増やして、経済的にも、社会的にも良い影響をもたらしたかったからです。応援してくれる方々がたくさんいるおかげで、大学生をはじめ、多くの方が訪れてくれるようになり、夏は予約で満室の日も多いです」と、語る。

しかし、現在、また新たな事業が動き出している。「現状のビジネスだけやっていたら楽に過ごせるかもしれませんが、他の町の成功例などを見ているうちに、旅行者だけでなく、誰もがもっと通いやすくて、人が交差しやすい場所が必要だなと思うようになりました。銀行からの融資を受けて、築50年の空き店舗を購入しました。もうすぐ、市街地に複合施設〝トリノメ商店〟をオープンさせます」と、工事中の施設を案内してくれた。

浦幌町にあるバトンを次につなごうとする文化

すごいバイタリティを感じたが、「基準は、お金を稼げるかどうかよりも、自分が楽しいと思えるかどうか、この町でやり続けたいと思えるかどうかですね。やると決めたら、後はもうやるしかありませんから」と、前だけを見据えている。

「今回、東京からやってきた藤巻美月さんの夢を応援するカタチになります。来てもらったからには、全力で応援したいですし、〝個人のやりたい〟を大切にした事業を成功できたら、地元やローカルでのプレイヤー作りにおいて役立つ経験となるし、モデルケースになるはずだと信じています」と、意識がとても高い。

若者たちが、主体性を持ってまちづくりに関わるのはなぜなのだろうか。「30代、40代の先輩たちが活躍していますし、よく相談に乗ってくれます。バトンをすぐ渡そうとするんです。〝バトンをもちよすぎるとよくない〟というのはよく言われます。〝いやいや、もうちょっと頑張ってください〟と思いますが、当事者意識はそうやって培われてきたのかもしれません。自分たちが動けば変えられるし、当事者意識を持って動けば変わると思うようになりました。自分たちがやらないといけないと感じています」と、力強く語ってくれた。

小松輝さん:1994年、徳島県徳島市生まれ。梨農家の孫。徳島大学で中山間地域のまち作りを学んだ後、2017年に地域おこし協力隊として浦幌町へ。3年間で観光事業の立ち上げに従事し、2019年に(株)リペリエンス設立。ゲストハウス事業などで地域への人口流入を作り出している。

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