【今回の取材地】
総人口:3,770,179人
人口密度:8,616人/㎢
隣接自治体:川崎市、藤沢市など
(2023年12月1日時点)
日本の当たり前の文化が消える可能性
古くからの日本の文化であるお祭り。
花火大会や盆踊り、神事などを含めたお祭りは全国に30万件ほどあると言われているが、実はそのいくつかは開催すること自体が難しい状況に陥っている。お祭りは私たち日本人にとって当たり前のようにある文化なので「祭りの消滅」と聞いても腑に落ちないかもしれない。
しかし「少子高齢化」「文化的行事への不参加」「地域行政の資金難」など、そういった普遍的な問題はお祭りの斎行にも影響し、継続が難しくなってきているのである。
祭りを残す男、宮田宣也の情熱の原点
この「お祭り消滅の危機」にを何とかしようと活動をしているのは一般社団法人「明日襷(アシタスキ)」代表の宮田宣也さん(36)。神社・祭礼の継続方法を共に考える「祭礼支援事業」を行っている。お祭りの神輿を担ぎに全国各地をかけずり回り、ときには海外にも神輿を持っていき自らお祭りや神輿文化の価値を広めている。まさに、人生をかけてお祭りに時間と情熱を捧げている、熱き魂を持った男である。
そんな宮田さんは祖父の故・宮田鐘司さんが神輿職人だったことから、幼い頃から地元横浜市栄区の春日神社の例大祭で神輿を担いできた。しかしお祭りや神輿はあくまで生活の中の一部で、そのときは人生のすべてを捧げるつもりもなく、国立大学の筑波大学・大学院まで進学した。
しかし東日本大震災が発生、そして祖父の死。それが宮田さんの人生を大きく変える分岐点となった。
祭り斎行と地域共創のヒント
動画内では、5年ぶりの祭りで神輿を担ぐことになる数日前から、当日までを追っている。宮田さんのリーダーシップを下に結集した人たち、最終的には祭りで神輿を担ぐという参加者の立場から、祭りそのものの運営も担うことになる。
自治体や町内会など、祭りを斎行するにあたり「人手不足」も大きな課題である。しかし宮田さんは、コロナ禍前から地道に「神社の清掃活動」を小さな規模で、誰に伝えるでもなく実施したことで、次第に地元の方から感謝をしてもらえるようになり、口伝てに活動が認知されることで協力してくれる人が増えていく。
活動の輪は加速度的に大きくなり、老若男女問わず、小さいお子さんからそのご両親、また以前から祭りに関わってきた高齢の方、さらには地元外から活動に共感を抱いた人など、いわゆる「地元民×関係人口」が混ざり合うことで、利害関係の無い共同体が構築された。
皆さんが口にするのは「楽しいから」。行動の原点は純粋に楽しいという感情で、その代用の効かない圧倒的な気持ちが、活動を推進する源になっている。
リーダーの存在。友達の友達という輪の広がり。ただ、楽しい。
いずれも単純明快な要素だが、改めて地域における活動が人の普遍的な関係や感情で推進されていくことが良く分かる。
動画内ではその中でも、リーダーである宮田さんの孤独な側面などを重点的に追っているが、全てが上手く行くことはなく、一筋縄ではいかない。その一つの答えを、動画では紹介しているつもりだ。
動画を視聴いただき、どこかのお祭りでもなにかの地域活動でも、新しい文化継承の胎動が聞こえるきっかけになればいいなと、思っている。