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まちを拓く人
更新日:2024年05月23日

東京から北海道への地方移住で、夢を実現した女性

ライター:

【今回の取材地】

北海道/十勝
面積:729.6㎢
総人口:4160人
人口密度:5.7人/㎢
隣接自治体:池田町、本別町など

北海道十勝にある人口4,200人の浦幌町では、地域おこし協力隊の制度も活用してここ数年、20代人口が転入超過になり、起業も活発になる状況が続いている。徳島県から移住した、小松さんは協力隊を卒業すると、町でゲストハウスなどのビジネスを次々に立ち上げ、今度は、町の中心部でシャッターの下りていた金物店を買い取り、新たなお店をオープンさせた。そのお店の店長として、東京からやってきた藤巻さんに話を聞いた。

都会育ちの元文学少女が、田舎町で本屋を開く

2023年10月末にオープンした「トリノメ商店」では、本屋、雑貨屋、カフェ、コワーキングスペース、シェアオフィス、ビール醸造所などが入るそうだ。店長を務めるのは東京からやってきた藤巻美月さん(23)。作家の上橋菜穂子さんが大好きで文学少女だったという彼女は、本屋さんをやりたいという夢を実現させることになった。

都会で生まれ育った藤巻さん。「もともと、祖父母が北海道好きで、その影響で私も、〝いつか北海道に住みたい〟と思うようになりました」。SNSの検索で、ドット道東に辿り着き、〝自分にできることありますか?〟とコンタクトを取って町を訪れたそう。ちょうど、ハハハホステル開業のタイミング。「小松社長に〝何かやりたいことはあるの?〟と聞かれて、〝本屋さんをやってみたい〟と伝えました。まさかそれを実現できるとは……」と、驚きの展開だった様子である。

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都会にはない余白のある生活を楽しむ藤巻さん

ギャップはなかったのか気になるところですが、「浦幌町には都会の生活にはない〝余白〟があっていいな、と感じます。寒さだけが心配ですが、初一人暮らしを楽しんでいます。とにかく、人があったかいですね。風邪をひいたときに、町内のお母さん的存在の方が〝食べ物困ってない?〟って鍋焼きうどんを持ってきてくれて感激しました」と、ほっこりエピソードを語ってくれた。

「この町には、〝誰も除け者にしない〟という、包み込むような優しさがあるんです。よく行くコンビニのオーナーが〝やりたいことがあるなら応援するよ!力になれることが嬉しいんだ!〟と背中を押してくれます。そういえば、地元の友達がハハハホステルにこの夏、1ヶ月滞在していたのですが、〝めっちゃ受け入れてくれる!〟と言っていました。彼女ももうすぐ、町に移住してきます」と、笑顔を浮かべた。

誰もがやりたいことを気軽に言える場所を目指して

トリノメ商店は、どんな空間になるのだろうか。「誰でも気軽に入りやすい場所にしたいですね。本との出会いはもちろん、人との出会いもあり、出来立てのクラフトビールも飲めるし、何もしなくてもいいんです。ゆったりとした空気が流れていて、私自身がそうだったように、やりたいことを気軽にポロッと言えるような場所が理想ですね」。

小説、絵本、実用書、アート・カルチャーなどのジャンルを主に古本をメインに、新刊やリトルプレスを織り交ぜて、いろんな棚で特色を出す計画のようである。クラウドファンディングを実施したところ多くの支援が集まり、目標達成したそうだが、「本棚オーナープランはあっという間に完売になりました。応援してくれる皆さんと一緒に店を作っていける楽しさがあります」と、藤巻さんはやる気に満ち溢れている。「町の方から、〝どんどんシャッターが降りてくる中で、また、開けてやろうって心意気が嬉しいよ!〟と言ってもらえて励みになっています」と目をキラキラさせた。

クラウドファンディングページ「人口4200人の北海道・十勝の小さな町に、本と出会える場所を作りたい!」

https://camp-fire.jp/projects/view/687403?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show

藤巻美月さん:2000年、東京都町田市生まれ。短大卒業後、書店勤務などを経て、2023年4月に(株)リペリエンスに入社して浦幌町に移住。2023年10月末にオープンした複合施設のトリノメ商店の店長を務める。

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